2020/05/24

亡くなった人には名前がある

NYTが活字のみの1面。1千人のコロナ死者名を掲載

朝日新聞 / ニューヨーク=鵜飼啓 / 2020年5月24日 9時6分

 米国での新型コロナウイルスによる死者数が10万人に迫る中、ニューヨーク・タイムズ紙が24日発行の1面を死者の名前や享年、一言紹介の活字だけで埋めた。この日の紙面には1千人分を掲載した。死者数が単なる数字ではなく、それだけの数の人生が終わりを迎えたという事態の重みを伝えようとの試みだ。

 同紙が23日夕、出来上がった紙面をSNSで公開した。「米国の死者数10万人に近づく 計り知れない喪失」との見出しで、記事の前文では「患者数や失業者数、死者数といった数字だけでコロナウイルスの与えた影響をはかるのは到底不可能だ」と記した。「ここに紹介する1千人は死者全体の1%に過ぎない」ともしている。

 同紙によると、死者が10万人に達したときの紙面作りを検討する中で、「編集局や読者の間で『数字慣れ』が起きているのではないか」と、10万人と書くだけではその重みを実感できないのではないかという指摘が出た。これを受け、米国各地のさまざまな新聞に掲載された訃報を集め、整理して掲載することにしたという。

 死者数百人分の写真を並べるという案もあったが、活字だけの案が採用された。紙面デザインを統括するトム・ボドキン氏は「ニューヨーク・タイムズで40年間働いてきたが、写真や図表のない一面は記憶にない」と同紙に語っている。

 同紙はふだんから、コロナウイルスで亡くなった人たちの訃報を「私たちが失った人たち」との題をつけ、連日掲載している。日本人では、4月下旬に亡くなった外交評論家の岡本行夫さんが取り上げられた。




 記事のリードにこうある。
彼らは単なる名簿上の名前、存在ではない。彼らはわれわれなのだ。
アメリカにおけるコロナウイルスのインパクトは到底、数字だけで測れるものではない。治療を受けた患者の数であれ、仕事を中断させられた人の数であれ、人生を打ち切られた人の数であれ。ウイルスで亡くなった10万人という悲しい節目を目前に、本紙は犠牲者の略歴や訃報を急いで探し訪ねた。ここにかかげる千人の人々は犠牲者のわずか1%にすぎない。誰一人、単なる数字ではない。
最初の3人だけ、紹介しよう。
Patricia Dowd、57歳、カリフォルニア州サンノゼ。シリコンバレーで監査役をしていた。Marion Krueger、85歳、ワシントン州カークランド。いつも笑顔の曽祖母。Jermaine Ferro、77歳、フロリダ州リー郡。結婚したばかりの新妻。



 日本でも、2011.3.11 東日本大震災での犠牲者1万6000人の氏名が新聞に掲載された。ボクが見たのは一年後の毎日新聞でだった。この名簿が名前研究の一因になった。今回はどうなのだろう。私たちが試されている。