2020/07/14

名を呼ぶ、名を呼ばれる

折々のことば(鷲田清一):1874

それがどれほど小さなささやきであったとしても、「私の名を呼ぶ者の声」を聴き逃さないでいたいものだ。(大嶋義実

     ◇

フルート奏者が奉職する京都市立芸術大学では、コロナ禍の中で迎えた卒業式で、祝辞の時間は削っても、卒業生全員の名を呼び、それに起立して「はい」と応える儀式だけは守った。呼び声に「ここにいます」と応じることが、その人の個としての存在の第一歩だとの信念から。

随想「名前って なに?」(『季刊ムラマツ』2020年夏号)から。

美術学部135名、音楽学部67名、大学院・美術研究科修士課程63名、音楽研究科修士課程18名、美術研究科博士課程5名、音楽研究科博士課程1名、総勢289名。289の名前と「はい」が会場に響いた勘定だ。

選者の鷲田さんは、その前の年まで京都市立芸術大学学長だった。彼自身もこの場面を経験してきている。