2021/01/10

同名を利用する文化

南部アフリカのカラハリ砂漠に住むジュホアンシ族は移動型狩猟採集民。かれらは社会規範に従って、新生児の命名権を父親(正確には新生児の母親の夫)に与える。また子の性別に応じて、自分の父親ないし母親の名前を取ってつけることを奨励する。同じ名前にすることで、新生児の中で父方祖父母の霊が生き続けるという。こうすることで祖父母や父方親族と新生児を結びつける絆が生まれる。父方の親族は新生児を呼ぶとき、その名前の人物に対する親族呼称が使われる。例えば、祖父の娘(新生児の母親)は赤ん坊を「お父さん」と呼ぶ。父性の確実性を高めるためかもしれない。

同名を名のる心理的効果はふたつある。

(1) 名前が自分と同じだったり、似ていたりすると、その人物に対する好意度や類似性知覚、援助欲求(同族心理)が高まる。

 Garner, R. 2005 What's in a name? : Persuasion perhaps. J. of Consumer Psychology, 15(2), 108-116. 同族心理は指導教員と学生との間でも観察される。

 Brendl, et al. 2005 Name letter branding. J. of Consumer Research, 32(3), 405-415. 自分の名前と似たブランドの商品を選ぶ傾向がある。

(2) 名前が同じことで、共同体から同じ名前を持つもの同士向けの規範が適用される。肉を分配する順番から水場の所有権まで、重要な事柄が決められる。

 私のファーストネームはジョセフだが、似た名前の人のことはよく思い出す。

 以上、Henrich, J. ジョセフ・ヘンリック 2016 The secret of our success(今西康子訳 2019 文化がヒトを進化させた 白揚社)から。