以下、堀田隆一 2016『英語の「なぜ?」に答えるはじめての英語史』研究社からの抜粋。
端的に言えば、(日本語と英語の)両言語における修飾語句と被修飾語句の語順配列の差異が、その理由である。
修飾する部分が長いとき
・日本語:修飾語句+被修飾語句
鈴木家の一郎→鈴木(の)一郎
・英語:被修飾語句+修飾語句
スミス家のジョン→John (of) Smith
・日本語:修飾語句+被修飾語句
鈴木家の一郎→鈴木(の)一郎
・英語:被修飾語句+修飾語句
スミス家のジョン→John (of) Smith
そもそも姓(surname)を採用するようになったのは、名(first name)だけでは個人を特定できない可能性が高まったからである。人民統治にも欠かせないし、ローカルレベルでもどこのSmithか区別する必要があったろう。そこで、地名や職業名を識別子として用い、◯◯のジョンと呼ぶようになった。その場合、X's JohnよりもJohn of Xが一般的だった。「の」が省略されて鈴木一郎になったように、ofが省略されて、John Smithとなったと考えることができる。
* * *
下線部分は、日本人名はもとより、どの文化にも当てはまる。どこのSmithなのか同様、どこの家の一郎なのか。考えてみれば、メールアドレス(アカウント@ドメイン名)も同様だ。同じアカウントはそこら中にありうる。それを区別するのがドメイン名。だから、同じドメイン内であれば、アカウントだけで、そのユーザーを特定できる。いわば名→姓の順番だ。
「名+姓」問題については、言語学的アプローチ以外でも説明できそうだと思っているが、それについては後日書くことにしたい。
* * *
堀田さんのブログから
・[2016-04-27-1] #2557. 英語のキラキラネーム,あるいはキラキラスペリング
・[2019-06-05-1] #3691. ローマ字でも日本人名は姓→名の順序で