金 栄勲(キム・ヨンフン)2010『韓国人の作法』集英社 から適宜抜粋。
「韓国人と名前、呼称」
17 どうして韓国の女性は結婚しても苗字を変えないの?
妻が夫の姓を名乗らない、いや名乗れないのは男女差別的な社会観念と慣習によるものである。しかし、韓国の歴史で女性の地位がいつも朝鮮時代と同じだったのではない。朝鮮時代前期までは財産相続、祭祀権限で差別はなかった。父系血縁は朝鮮時代後期に入ってから定着したものである。最近両親の姓を合わせて名乗るケースが増えている。例えば、金と朴を姓として合わせて名乗ることだ。こうした姓にする現象は、韓国社会で変化する女性の地位と関係していることでもあるといえよう。
22 どうして目上の人の名前を呼んではいけないの?
理由は簡単である。名前を呼んだときに受ける社会的な圧力(長幼有序という儒教的倫理意識)のためである。基本的に自分より年上の人の名前は公式な場であれ非公式な場であれ呼ばないのが韓国人の慣習である。大体の場合、姓と職位を呼ぶが、金部長、姜教授などの後に「様」をつける。職位が分からないときは姓名前に「様」をつけたり、崔先生様と呼んだりするのが一番無難である。しかし、たとえば部下でありながら自分より年上の場合、どう呼べばいいのあろう。
28 どうして韓国人は赤い色で名前を書くのを避ける?
韓国人がふだん赤い色で名前を書かないのは、死んだ人の名前を赤い色で書くからである。棺の上にかぶせる布の上に亡者の名前が赤い色で書かれる。亡くなった人の戸籍には赤い線が引かれる。名前と関連した赤い色は死を意味するのもので、生きている人の名前を赤い色で書くということは呪詛なのである。
しかし、韓国文化で赤い色は死のみならず正反対の生命をも意味しているし、非常に多様な意味を持っている。